Славное море - священный Байкал!(聖なる湖バイカル)

(1)
栄えある湖 聖なるバイカルよ!
栄えある我が船 オムリの樽よ!
さあ、バルグージンの風よ 吹いてくれ
しめたぞ 行く手は 近い

(2)
長きにわたり 鎖につながれ
長き間 アカツゥヤ山を眺めてきた
老いたる友に 助けられて
いま自由への 道を辿る

(3)
シルカ、ネルチンスクも 畏れるにあたわず
鉱山の番人も 我を見逃し
密林の野獣も 我を襲わず
追っ手の弾も 我に当たらず

(4)
夜も 昼も 歩き続けた
街に入れば 用心深く あたりを見渡す
農婦は 我に パンを与え
若者は 我に マホールカを分ける

(5)
栄えある湖 聖なるバイカルよ!
栄えある我が帆は 穴だらけの上着!
さあ、バルグージンの風よ 吹いてくれ
雷鳴の轟きは 近し
(1)
Славное море - священный Байкал!
Славный корабль - омулевая бочка!
Эй, баргузин, пошевеливай вал, -
Молодцу плыть недалечко.
(2)
Долго я тяжкие цепи носил,
Долго бродил я в горах Акатуя.
Старый товарищ бежать подсобил,
Ожил я, волю почуя.
(3)
Шилка и Нерчинск не страшны теперь,
Горная стража меня не поймала,
В дебрях не тронул прожорливый зверь,
Пуля стрелка миновала.
(4)
Шел я и вночь, и средь белого дня,
Вкруг городов, озираяся зорко,
Хлебом кормили крестьянки меня,
Парни снабжали махоркой.
(5)
Славное море - священный Байкал!
Славный мой парус - кафтан дыроватый!
Эй, баргузин, пошевеливай вал,
Слышатся грома раскаты.
Славное море - священный Байкал!(聖なる湖バイカル)
[解説]
 19世紀から唄われてきた「聖なる湖バイカル」(Славное море - священный Байкал!)のテーマは、シベリア流刑・強制労働です。ロシア皇帝に対する反乱を起こしたデカプリスト・グループなど、政治犯を遠隔地に放逐すると共に開発の労働力として活用する流刑あるいは強制労働が、帝政ロシア時代の19世紀から、さかんに実施されてきました。

 流刑など、懲役の程度はそれぞれ政治犯が冒した罪の軽重や身分によっても異なりましたが、この歌が取り上げているのは、バイカル湖周辺地区の鉱山で重労働につかされた政治犯の逃避行です。この歌詞は、シベリアで教師をつとめた詩人ドミトリー・ダヴィドフ(1811−1888)が創作した叙事詩「シベリア逃亡者の回想」を基にしたものです。この詩は、サンクト・ペテルスブルグの週刊新聞「輝く月(Золотое руно)」に1858年、掲載されました。

 1863年には、メロディーがついて民衆の間で唄われはじめましたが、このメロディーは帝政ロシアからの独立をめざすポーランドの運動の中で生まれた反体制愛国唄「ニーメン川のために」に由来しています。

 歌では、世界の全淡水量中、20%をたたえるという雄大なバイカル湖が、自由への門口として美しく広がるさまや、途中で人情ある農婦や若者たちがパンや煙草を与えてくれるありがたみなど、逃避行の中で希望を膨らます革命家の心情が豊かに盛り込まれています。「ソ連の父」、ソ連共産党の前身であるボリシェビキ指導者ウラジミール・イリイチ・レーニン(1870−1924)の愛唱歌であったとも言われています。

 参考映像は、バイカル湖近くの村で生まれ、この歌に格別の思い入れのあるバス歌手レオニード・ハリトーノフさんの歌唱。1991年、モスクワのチャイコフスキーホールで開かれたソロ・コンサートのもので、伴奏はオシポフ民族楽器合奏団です。
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